山吹  ―発端―

 書物にその名を見出した時、左目が戦慄したようだった。
――不死の者にすら死を齎す男
 この男であればこの艱難にすら死を齎す事が出来るだろう。
 そしてこの私にも。
 余りにもその名を心が呼んだので、まるでその男に恋をしているようだった。
 旱に焼かれた草木が雨を恋うるように、私はその男の紡ぐ死に恋をしていたのだ。
 だが。
 これは封ずべきもの。
 この四名は、そんな物の為に、仮初とはいえ死を味わうわけではないのだから。
 これは傀儡。
 私の代わりに死を振るうだけの者。
 この心を知られてはいけない。
 恐ろしげな甲冑に身を包んだ公達に向かい、想いを殺して低く言う。
「丁度良い、貴方の力見せてもらいましょう」

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